親御さんのための安全な家

離れて暮らす親御さんのための防犯・防災対策:住まいの安全を高めるポイント

Tags: 高齢者住宅, 防犯対策, 防災対策, 住宅改修, 安全対策

はじめに

離れて暮らすご家族にとって、親御さんの安全は何よりも大切な関心事でしょう。特に、高齢になるにつれて、住み慣れたご自宅でも思わぬ事故やトラブルに巻き込まれるリスクが高まります。これまで「親御さんのための安全な家」では、転倒やヒートショックといった住環境に起因する物理的なリスクとその対策についてご紹介してまいりました。本稿では、これらに加えて、外部からのリスクである「防犯」、そして自然災害に対する「防災」という観点から、高齢者の住まいの安全対策について解説します。

高齢者の住まいにおける防犯・防災対策は、単に建物を強化するだけでなく、親御さんの身体状況や生活スタイル、地域特性などを考慮した、よりきめ細やかな配慮が必要です。また、緊急性の高い事態が発生した際、迅速かつ的確に対応するためには、事前の準備が不可欠となります。

高齢者の住まいにおける主な防犯・防災リスク

高齢者の住まいでは、一般住宅と比較して、以下のような特有のリスクが考えられます。

これらのリスクに対して、具体的にどのような対策が考えられるのかを見ていきましょう。

具体的な防犯対策と改修方法

高齢者の住まいの防犯対策は、「侵入させない」「時間をかけさせる」「目をつけさせない」という3つの原則に基づきます。

防犯対策の改修事例と費用目安

| 対策内容 | 費用目安(工事費込み) | DIYの可否 | 専門業者依頼 | ポイント | | :--------------------------- | :--------------------- | :-------- | :----------- | :----------------------------------------- | | 玄関ドア補助錠設置(簡易型) | 5千円~2万円程度 | 可能 | 不要 | 穴あけ不要の簡易タイプであれば比較的容易 | | 玄関ドア補助錠設置(本設置) | 2万円~5万円程度 | 困難 | 必要 | ドアへの加工が必要 | | 窓用防犯フィルム貼付け | 窓1枚あたり5千円~2万円 | 可能 | 推奨(綺麗に貼るため) | 凹凸ガラスなど貼れないタイプもある | | 防犯ガラスへの交換 | 窓1枚あたり5万円~20万円 | 困難 | 必要 | ガラスの種類やサイズで大きく変動 | | センサー付きライト設置 | 1万円~3万円程度 | 可能 | 推奨(配線工事が必要な場合) | コンセント式はDIY、配線工事は専門業者へ | | テレビモニター付きドアホン | 3万円~10万円程度 | 困難 | 必要 | 無線タイプや録画機能付きなど | | 防犯カメラ設置 | 3万円~30万円程度 | 一部可能 | 推奨(配線や設定) | システム構成で費用が大きく変動 |

※上記費用はあくまで一般的な目安であり、建物の状況や選択する製品、業者によって異なります。

具体的な防災対策と改修方法

災害リスクは多岐にわたるため、それぞれのリスクに応じた対策が必要です。

防災対策の改修事例と費用目安

| 対策内容 | 費用目安(工事費込み) | DIYの可否 | 専門業者依頼 | ポイント | | :----------------------- | :--------------------- | :-------- | :----------- | :----------------------------------------- | | 家具固定 | 1個あたり数百円~数千円 | 可能 | 不要 | 賃貸物件の場合は壁に穴を開けない工夫が必要 | | 住宅用火災警報器設置 | 1個あたり5千円~1万円 | 可能 | 推奨(適切な位置への設置) | 電池式とコンセント式がある | | 安全機能付きガスコンロ | 5万円~20万円程度 | 困難 | 必要 | グレードにより費用が変動 | | 耐震診断 | 5万円~20万円程度 | 困難 | 必要 | 建物の規模や構造による | | 耐震補強工事 | 50万円~数百万以上 | 困難 | 必要 | 診断結果に基づく工事内容で大きく変動 | | 簡易な止水板設置 | 数万円~ | 一部可能 | 推奨(適切な設置) | DIY可能な簡易タイプもある |

※上記費用はあくまで一般的な目安であり、建物の状況や選択する製品、業者によって異なります。特に耐震改修は、建物の構造や劣化状況によって大きく変動します。

安全確認のポイント(チェックリスト要素)

親御さんの住まいが防犯・防災の観点からどの程度安全かを確認するためのチェックポイントを挙げます。定期的に、または大きな改修を検討する前に、これらの視点で確認を行うことをお勧めします。

これらのポイントを確認することで、どのような対策が優先的に必要かが見えてきます。

地域のリソースを活用する

離れて暮らす親御さんの住まいの安全対策を進めるにあたり、地域の自治体や関連団体が提供している情報や支援制度を活用できる場合があります。

多くの自治体では、高齢者の住まいに関する相談窓口を設置しています。ここでは、住宅改修に関する一般的なアドバイスや、利用可能な補助制度についての情報を提供していることがあります。また、耐震診断や耐震改修、バリアフリー改修などに対して補助金制度を設けている自治体も少なくありません。

具体的な制度の内容や利用条件は地域によって異なりますので、親御さんがお住まいの自治体のウェブサイトを確認したり、直接問い合わせたりすることをお勧めします。専門家(建築士、ケアマネージャーなど)や地域の工務店も、これらの情報に詳しい場合があります。

まとめ

離れて暮らす親御さんの住まいにおける防犯・防災対策は、安全・安心な暮らしを維持するために欠かせない要素です。すぐにできる簡単な対策から、専門的な知識や技術が必要な改修工事まで、様々な方法があります。

まずは、本稿でご紹介したチェックポイントを参考に、親御さんのご自宅のリスクを把握することから始めてみてはいかがでしょうか。その上で、親御さんのご意向も踏まえながら、どのような対策が必要か、どこに優先順位を置くかを検討してください。費用が気になる場合は、利用可能な補助制度がないか自治体に確認することも有効です。

急な事態が起きてから慌てるのではなく、日頃から安全な住まいづくりのための準備を進めておくことが、離れて暮らす親御さんとご家族双方にとっての安心につながります。もし、具体的な改修が必要な場合は、地域の専門知識を持った工務店などにご相談されることをお勧めします。彼らは高齢者の住まいの特性や地域の事情を理解しており、適切なアドバイスや施工を提供できるでしょう。