離れて暮らす親御さんの家の外周り・庭の安全対策:転倒・転落リスクを防ぐ改修事例と費用目安
はじめに:見落とされがちな外周り・庭の危険性
離れて暮らす親御さんの住まいの安全を考える際、多くの方がまず室内、特に浴室やトイレといった水回り、あるいは階段や玄関の段差などに目を向けられることでしょう。しかし、意外と見落とされがちなのが、家の外周りや庭といった屋外空間に潜む危険です。
高齢期には、身体機能の変化により、わずかな段差でつまずいたり、バランスを崩しやすくなったりします。庭の手入れやゴミ出し、あるいは近所への短い外出など、日常的に利用する家の外周りや庭は、こうした転倒や転落のリスクが高い場所となり得ます。特に急な怪我などをきっかけに親御さんの安全対策を検討されている方にとって、緊急性の高い箇所の一つとも言えます。
この記事では、離れて暮らす親御さんの家の外周りや庭に潜む具体的な危険箇所とその対策、実際の改修事例や費用目安、そしてご自身で安全を確認する際のポイントについて解説いたします。
外周り・庭に潜む具体的なリスク
高齢者の転倒や転落事故は、住み慣れた場所で発生することが少なくありません。家の外周りや庭において、特に注意が必要なリスクは以下の通りです。
- 通路の不備: 玄関アプローチだけでなく、庭を通って物置に行く、裏口からゴミを出す、といった日常的な動線上の通路に、段差がある、舗装がでこぼこしている、滑りやすい素材が使われている、ひび割れや亀裂がある、などが危険となります。
- 傾斜と階段: 庭に傾斜がある場合や、高低差を解消するための短い階段も、手すりがないとバランスを崩す原因になります。
- 水はけの悪さ: 雨の日やその後に通路や庭が水浸しになる場所は、滑りやすさが格段に増します。苔や藻が発生しやすい環境も同様です。
- 不要な物やコード: 庭や物置周辺に放置された園芸用品、ホース、電気コードなども、つまずきの原因となります。
- 植栽の張り出し: 通路に張り出した木の枝や低木は、視界を遮ったり、身体に引っかかったりする危険があります。
- 照明不足: 夜間、通路や庭が暗いと、足元の危険が見えにくくなり、転倒リスクが高まります。特に人感センサーがない場所では、荷物を持っている際などに不便を感じやすいです。
- 水路や池: 庭に水路や池がある場合、転落のリスクが伴います。
リスク別の具体的な対策と改修事例・費用目安
これらのリスクに対して、具体的な改修や対策を講じることで、親御さんが安全に外周りや庭を利用できるようになります。
通路の安全化
- 段差解消:
- 事例: 玄関から庭へ続く通路に小さな段差がある場合、スロープを設置するか、段差を複数の緩やかなステップに改修する。
- 費用目安:
- 簡易的な置き型スロープ:数千円〜数万円(DIY可能)。
- コンクリートなどで本格的なスロープや緩やかな階段を設置:10万円〜数十万円(専門業者に依頼)。
- DIYと専門業者: 簡易的な段差解消プレートや滑り止めテープの貼付はDIYでも可能ですが、勾配の計算が必要なスロープ設置や、基礎工事を伴う改修は専門業者に依頼することをお勧めします。
- 舗装の改善:
- 事例: 砂利道で歩きにくかったり、コンクリートにひび割れがあったりする通路を、滑りにくい素材(インターロッキングブロック、洗い出しコンクリート、ゴムチップ舗装など)でフラットに舗装し直す。
- 費用目安: 舗装面積や素材、下地の状況によりますが、数万円〜数十万円/平方メートル(専門業者に依頼)。
- 手すり設置:
- 事例: 玄関アプローチの階段や、庭への下り坂になっている通路脇に、丈夫な手すりを設置する。
- 費用目安: 設置場所や長さ、素材によりますが、1メートルあたり数万円〜十数万円(専門業者に依頼)。補助金制度を利用できる場合もあります。
- DIYと専門業者: 簡易的な置き型手すりはDIYも可能ですが、強固な設置が必要な場合は、専門業者に依頼し、安全性を確保することが重要です。
庭全体の危険箇所対策
- 傾斜地の安全化:
- 事例: 緩やかな傾斜地に手すり付きの通路を新設したり、段差を解消しつつ傾斜を緩やかにする舗装を行う。
- 費用目安: 傾斜の程度や改修規模によりますが、数十万円〜数百万円(専門業者に依頼)。
- 水路・池への転落防止:
- 事例: 庭にある水路や池の周囲に、適切な高さと強度の柵やフェンスを設置する。
- 費用目安: 設置する長さや素材、デザインによりますが、数万円〜数十万円/メートル(専門業者に依頼)。
- 庭木の剪定・整理:
- 事例: 通路に張り出した枝を剪定したり、物置周辺の不要な物を片付けたりする。
- 費用目安: 剪定は庭木の数や規模により数千円〜数万円(造園業者、シルバー人材センターなど)。物の整理はご自身やご家族でも可能です。
照明の設置
- 事例: 玄関アプローチ、通路、階段、物置への通路などに、夜間でも足元がよく見えるように照明を追加設置する。人感センサー付きにすると、必要な時だけ点灯し便利で省エネにもなります。
- 費用目安:
- 簡易的なソーラーライトや電池式ライト:数千円〜数万円(DIY可能)。
- 配線工事が必要な人感センサー付き屋外照明:数万円〜十数万円(専門業者に依頼)。
- DIYと専門業者: 簡易的な照明はDIYも可能ですが、配線工事を伴う場合は電気工事士の資格が必要なため、専門業者に依頼してください。
安全確認のポイント:外周り・庭をチェックする視点
親御さんの家の外周りや庭の安全性を確認する際は、以下のポイントを意識してチェックすることをお勧めします。まるで親御さん自身がそこを通るかのように、ゆっくりと、そして様々な条件下で確認してみましょう。
- 歩行ルートの確認:
- 玄関アプローチ、庭、物置、ゴミ置き場など、親御さんが日常的に利用する全ての通路を実際に歩いてみてください。
- 足元の状態(でこぼこ、ひび割れ、砂利の不安定さ、滑りやすさ)を確認します。
- 段差や傾斜の箇所、その高さや勾配を把握します。
- 手すりの必要性:
- 階段や段差のある場所、傾斜がきつい場所に、手すりがあれば安全に移動できるか検討します。
- 既存の手すりがあれば、ぐらつきや高さ、太さが適切か確認します。
- 照明の確認:
- 夜間、全ての通路が十分に明るいか確認します。特に角や段差のある場所、鍵を開ける玄関周りなどが重要です。
- 庭の奥まで行く場合の照明も考慮します。
- 物の配置:
- 通路や動線上に、つまずきやすい物が置かれていないか確認します。
- 植栽が通路を塞いでいないか、低い位置に危険な枝がないか確認します。
- 水はけの確認:
- 雨の日や雨上がりに、通路や庭に水たまりができないか、滑りやすくなっていないか確認します。苔や藻の発生状況もチェックします。
- 見落としがちな場所:
- 家の裏側や、普段あまり通らない場所に、危険な箇所(例えば、傾斜地の端、古い構造物など)がないか確認します。
これらのポイントをリスト形式で書き出し、写真なども撮りながら確認していくと、より具体的に危険箇所を把握しやすくなります。
費用に関する補足
ご紹介した費用目安は、あくまで一般的な改修の参考価格です。建物の構造や敷地の状況、使用する素材、依頼する業者によって費用は大きく変動します。具体的な改修を検討される際は、複数の専門業者から見積もりを取り、内容をよく比較検討することをお勧めします。
地域のリソースの活用
高齢者の住宅改修については、お住まいの自治体で独自の助成制度や相談窓口を設けている場合があります。こうした制度を活用することで、費用負担を軽減できる可能性があります。また、地域の工務店や建築士事務所、あるいは親御さんの担当ケアマネージャーなども、高齢者の住まいに関する専門知識や地域のリソースに関する情報を持っている場合があります。困った際は、こうした専門家に相談することも有効な手段です。
まとめ
離れて暮らす親御さんの家の外周りや庭は、転倒・転落リスクが潜む場所でありながら、室内ほど意識されにくいかもしれません。しかし、ちょっとした改修や環境整備を行うことで、親御さんの日常的な安全性を大きく高めることができます。
ご紹介した具体的な対策や改修事例、安全確認のポイントが、親御さんの住まいの安全化を検討される際の一助となれば幸いです。急な状況であっても、落ち着いて状況を把握し、まずは優先度の高い場所から対策を講じることをお勧めします。安全な住環境を整えることは、親御さん自身の安心にも繋がります。