親御さんのための安全な家

高齢者のための浴室・脱衣所安全対策:転倒・ヒートショックを防ぐ

Tags: 高齢者住宅, 安全対策, 浴室リフォーム, ヒートショック, バリアフリー

はじめに:浴室・脱衣所の潜む危険性

離れて暮らす親御さんの住まいについて考える際、特に注意が必要な場所の一つが浴室と脱衣所です。これらの空間は、高齢者にとって転倒やヒートショックのリスクが高い場所として知られています。親御さんが安心して暮らせるよう、浴室・脱衣所の安全対策について具体的な視点から考えてみましょう。

浴室・脱衣所の主な危険箇所とリスク

浴室や脱衣所には、以下のような高齢者の安全を脅かす要因が潜んでいます。

具体的な安全対策と改修方法

これらのリスクを低減するためには、住環境の改修が有効です。主な対策とその方法をご紹介します。

  1. 手すりの設置:

    • 目的: 立ち座りや移動時の体の支えとなり、転倒を防ぎます。
    • 設置場所: 浴室の出入り口、洗い場、浴槽の縁、浴槽の中など、動作に合わせて必要な箇所に設置します。縦手すりは立ち上がりに、横手すりは移動や姿勢保持に役立ちます。
    • 種類: 浴室用手すりは、湿気に強く、握りやすい形状のものが適しています。設置方法には、壁にしっかり固定するタイプと、浴槽の縁などに挟んで固定するタイプがあります。
  2. 滑りにくい床材への変更:

    • 目的: 水に濡れても滑りにくい床にすることで、転倒リスクを軽減します。
    • 方法: 浴室・脱衣所ともに、速乾性があり、表面に微細な凹凸加工が施された滑りにくい機能性床材(例:バスナフローレ、サーモタイルなど)への張り替えを検討します。
  3. 段差の解消:

    • 目的: つまずきや転倒の原因となる段差をなくします。
    • 方法: 浴室の入り口の段差は、スロープの設置や浴室全体の床面のかさ上げで解消できます。洗い場と浴槽の段差は、段差の少ないタイプの浴槽(和洋折衷タイプや低床タイプ)への交換が有効です。
  4. 浴室暖房乾燥機の設置:

    • 目的: 浴室・脱衣所の温度差をなくし、ヒートショックを予防します。
    • 方法: 換気扇の代わりに浴室暖房乾燥機を設置します。入浴前に浴室を暖めることで、温度差を解消できます。脱衣所にも暖房設備を設置し、室間の温度差を小さくすることが重要です。
  5. 浴槽の交換:

    • 目的: またぎやすい高さや、手すり、滑り止め加工など、高齢者に配慮した浴槽に変えます。
    • 方法: またぎ高さを低くした浴槽や、内部に手すりやベンチを設けた浴槽、底面に滑り止め加工が施された浴槽などがあります。
  6. 扉の交換:

    • 目的: 万が一の事態に備え、外から開けやすい扉にします。
    • 方法: 内側で倒れても開けられる折れ戸や引き戸への交換が有効です。既存の開き戸を引き戸に変更するリフォームも可能です。

具体的な改修事例と費用目安

いくつかの改修事例とそのおおまかな費用目安をご紹介します。費用は住宅の構造や既存設備の状況、選ぶ製品のグレード、依頼する業者によって変動します。

これらの費用はあくまで一般的な目安であり、正確な費用は必ず複数の業者に見積もりを依頼して確認してください。

DIYで可能な範囲と専門業者に依頼すべき範囲

安全対策の実施にあたっては、DIYで可能なものと、専門業者に依頼すべきものがあります。

安全に関わる重要な改修については、親御さんの身体状況や家屋の構造を正しく判断できる専門知識が必要です。安心して暮らすためにも、自己判断が難しい工事は必ず専門業者に依頼してください。

安全確認のポイント:自宅をチェックする視点

親御さんの浴室・脱衣所の安全性を確認する際には、以下の視点でチェックしてみましょう。

これらのポイントをチェックする際に、親御さんと一緒に話しながら確認すると、より実情に合った対策が見えてくる場合があります。

相談できる場所と支援制度

高齢者の住環境整備には、様々な公的支援制度があります。

これらの情報源を活用し、専門家と連携しながら進めることで、より効果的かつ経済的に安全対策を実施できる可能性があります。

まとめ:早期の確認と専門家への相談を

離れて暮らす親御さんの浴室・脱衣所の安全対策は、急な事故を防ぎ、親御さんが安心して自立した生活を続けるために非常に重要です。転倒やヒートショックのリスクを理解し、今回ご紹介した具体的な対策やチェックポイントを参考に、まずは現状を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。そして、より専門的な判断や工事が必要な場合は、迷わず専門家や自治体の窓口に相談することをお勧めいたします。