親御さんのための安全な家

高齢者のためのドア・扉安全対策:開閉リスク、指挟み、段差解消、費用目安

Tags: 高齢者住宅, 安全対策, ドア, 扉, リフォーム, バリアフリー, 転倒防止, 費用目安

はじめに:ドア・扉に潜む高齢者の住まいのリスク

ご両親が住み慣れた家であっても、加齢に伴う身体機能の変化により、これまで当たり前だった場所が突然危険な場所になることがあります。特に、家の中の各部屋をつなぐドアや扉は、日常的に何度も通過する場所でありながら、高齢者にとって意外なリスクが潜んでいます。例えば、重いドアの開閉、操作しにくいドアノブ、敷居の段差などは、転倒や指挟みといった事故の原因となり得ます。

この記事では、離れて暮らす親御さんの住まいにおいて、ドアや扉に関する具体的なリスクとその対策について解説します。建築やリフォームの基本的な知識をお持ちの方々が、高齢者の安全に特化した視点を取り入れ、急な状況にも対応できるよう、実践的な情報や費用目安、安全確認のポイントをお伝えします。

ドア・扉に潜む具体的なリスク

高齢者の身体機能の変化(筋力低下、関節の柔軟性低下、視力低下、バランス能力の低下など)は、ドアや扉の操作や通過を困難にし、以下のようなリスクを高めます。

  1. 開閉の困難さ:
    • ドアが重い: 筋力が低下すると、通常の開き戸を開閉するのに負担がかかり、バランスを崩す原因になります。
    • 引き戸が重い・固い: レールや戸車の劣化により引き戸の滑りが悪くなると、開閉に大きな力が必要になり、体勢を崩しやすくなります。
    • ドアノブの操作性: 丸型や小型のドアノブは、握力が低下したり関節がこわばったりすると回しにくく、手が滑って転倒につながる可能性もあります。
  2. 指挟み:
    • 開き戸の場合、丁番側や戸先側に手を添えている際にドアが閉まると、指を挟んで大怪我をする危険性があります。特に、バランスを崩した際にドアに手をついた場合などに起こりやすい事故です。
  3. 段差(敷居):
    • 部屋の出入口にある敷居は、わずかな段差であってもつまずきの原因の大部分を占めます。特に、足が上がりにくくなったり、視界が狭くなったりすると、敷居が見えにくくなり、転倒リスクが大幅に増加します。
  4. 開閉時の衝突:
    • 開き戸を開ける際に、開く方向に人がいることに気づかず衝突したり、開けたドアが廊下を塞いで移動を妨げたりすることがあります。

これらのリスクは単独で発生するだけでなく、組み合わさることでより深刻な事故につながる可能性があります。

具体的な対策と改修方法、費用目安

ドア・扉に関するリスクを低減するための具体的な対策と改修方法を、費用目安とともにご紹介します。DIYで可能な範囲と、専門業者に依頼すべき範囲を考慮して検討することが重要です。

1. 開閉の困難さ・操作性の改善

2. 指挟み防止

3. 段差(敷居)の解消

4. 引き戸への変更(総合的な改善)

安全確認のポイント:ドア・扉チェックリスト

ご両親の住まいのドアや扉について、以下のポイントを確認することで、潜在的なリスクを洗い出すことができます。

これらのチェックポイントを確認し、リスクの高い箇所から優先的に対策を検討することが、効率的で効果的な安全対策につながります。

地域の支援制度や相談窓口

高齢者の住宅改修に関しては、多くの自治体で費用の一部を助成する制度や、専門家による無料相談窓口を設けています。具体的な制度の内容や対象となる工事、申請方法などは各自治体によって異なりますが、こうした制度を活用することで、改修にかかる経済的な負担を軽減できる可能性があります。まずは、お住まいの市区町村の役所や社会福祉協議会などに問い合わせてみることをお勧めします。また、地域包括支援センターでも相談に応じています。

まとめ

離れて暮らす親御さんの住まいにおいて、ドアや扉は日常的に使う場所だからこそ、そこに潜む小さなリスクを見過ごさずに対策を講じることが、大きな事故を防ぐために非常に重要です。開閉の困難さ、指挟み、そして特に敷居の段差は、高齢者の転倒事故に直結しやすい危険箇所です。

レバーハンドルへの交換や指挟み防止グッズの設置といった比較的簡単な対策から、敷居の段差解消、そして開き戸から引き戸への変更といった大掛かりな改修まで、様々な方法があります。それぞれの状況や予算、そして親御さんの身体状況や将来的な変化を見越して、最適な対策を選択することが大切です。

この記事でご紹介した安全確認のポイントを参考に、まずは親御さんの家のドアや扉をチェックしてみてください。必要に応じて専門家のアドバイスを求め、安全で安心な住まいづくりを進めていただければ幸いです。