離れて暮らす親御さんの住まい 電気・ガス・火災の安全確保:対策と費用目安
はじめに
離れて暮らす親御さんの住まいについて、転倒や段差、浴室での事故といった物理的な危険に加え、電気やガス、火災に関するリスクもまた、見過ごすことのできない重要な課題です。特に、加齢に伴う身体機能や認知機能の変化は、これらのリスクを高める要因となり得ます。
この記事では、離れて暮らす親御さんの住まいにおける電気・ガス・火災に関する主なリスクを挙げ、具体的な安全対策、実施方法、そして費用目安について解説します。親御さんの安全な暮らしをサポートするための一助となれば幸いです。
電気・ガス・火災に関する潜在的なリスク
高齢者の住まいにおいて、電気やガス、火災に関連する事故は、以下のような要因によって発生する可能性があります。
- 電気関連:
- コード類につまずくことによる転倒、またはコードの損傷によるショート・火災。
- たこ足配線による過負荷での発熱・火災。
- コンセントやプラグ周りに溜まった埃によるトラッキング現象(発火)。
- 暖房器具や電気ポットなどの消し忘れによる過熱・火災。
- 古い配線や設備の劣化による漏電やショート。
- ガス関連:
- ガスコンロの火の消し忘れによる火災。
- ガス機器の不完全燃焼による一酸化炭素中毒。
- ガス漏れによる中毒や爆発・火災。
- 換気不足によるリスク増大。
- 火災関連(その他):
- ストーブなどの暖房器具周辺に燃えやすいものを置くことによる引火。
- 仏壇のろうそくや線香の火の不始末。
- 寝たばこや、たばこの不始末。
- 地震発生時の電気機器からの二次火災(通電火災)。
- 火災報知機の未設置、または電池切れによる発見の遅れ。
これらのリスクは、親御さんの急な怪我や体調変化のきっかけとなるだけでなく、命に関わる重大な事故につながる可能性も否定できません。
具体的な安全対策と改修方法、費用目安
電気・ガス・火災に関するリスクを低減するためには、住まいの状況に応じた適切な対策を講じることが重要です。以下に、具体的な対策とその改修方法、費用目安を示します。
1. 電気関連の安全対策
- コード類の整理とコンセント増設/移設:
- リスク: コードの露出によるつまずき、劣化。
- 対策: 必要に応じてコンセントを増設・移設し、床を這うコードを減らす。モール等でコードを保護・整理する。
- 改修方法: 電気工事業者によるコンセントの増設や配線工事。コード整理はDIYでも可能。
- 費用目安: コンセント増設・移設は1箇所あたり数万円程度から。配線距離や既存配線の状況により変動します。コード整理用品は数百円から。
- トラッキング現象防止とブレーカー設置:
- リスク: コンセントやプラグ周りの埃による発火。古い配線や劣化による漏電。地震時の通電火災。
- 対策: 定期的な清掃。埃がつきにくい構造のコンセントへの交換。漏電ブレーカーや感震ブレーカーの設置。
- 改修方法: 電気工事業者によるコンセント交換、ブレーカー設置工事。
- 費用目安: 漏電ブレーカー設置は数万円程度。感震ブレーカーは製品タイプにより数万円から十数万円程度。コンセント交換は1箇所数千円から(工事費別途)。
- 電化製品の安全化:
- リスク: 消し忘れによる過熱・火災。
- 対策: 一定時間で自動的に電源が切れる安全機能付きの電気ポットや暖房器具への買い替え。タイマー付きコンセントの活用。
- 費用目安: 製品による(数千円から数万円)。タイマー付きコンセントは数千円程度。DIY可能(製品設置)。
2. ガス関連の安全対策
- 安全機能付きガス機器への交換:
- リスク: ガスコンロの消し忘れ、不完全燃焼。
- 対策: 全てのバーナーに立ち消え安全装置や調理油過熱防止装置、消し忘れ消火機能などが付いたSiセンサーコンロへの交換。換気扇の設置や交換、清掃。
- 改修方法: ガス機器設置業者やリフォーム業者による交換工事。
- 費用目安: Siセンサーコンロへの交換は製品価格を含め数万円から10万円以上。換気扇交換は数万円から。専門業者への依頼が必要です。
- ガス漏れ警報器・CO警報器の設置:
- リスク: ガス漏れ、一酸化炭素中毒。
- 対策: ガス漏れや不完全燃焼による一酸化炭素の発生を検知する警報器を設置する。
- 費用目安: 警報器本体は1~2万円程度。設置場所により工事費が別途かかる場合があります。DIY可能な製品もありますが、設置場所の適切性を確認が必要です。
3. 火災関連(その他)の安全対策
- IHクッキングヒーターへの交換:
- リスク: ガスコンロからの引火、火傷。
- 対策: 火を使わないIHクッキングヒーターへの交換。
- 改修方法: 電気工事業者、リフォーム業者による交換工事。電源工事(200V)が必要になる場合があります。
- 費用目安: 本体価格と工事費を含め10万円以上となることが多いです。
- 火の元の管理:
- リスク: ストーブ周辺の引火、仏壇の火の不始末、寝たばこ。
- 対策: ストーブの周囲に物を置かないよう注意喚起。仏壇のろうそくや線香を電気式に変更。加熱式たばこへの変更や禁煙の検討。
- 費用目安: 電気式仏具は数千円から。DIY可能。
- 火災報知機の設置・点検:
- リスク: 火災の発見遅れ。
- 対策: 法律で義務付けられている場所に加え、寝室等にも設置する。定期的に点検し、電池切れの場合は交換する。
- 改修方法: 自身で設置可能な製品も多いですが、共同住宅や条例によっては設置場所や方法が指定されている場合があります。不安であれば専門業者に依頼も可能です。
- 費用目安: 1箇所あたり数千円から1万円程度。設置場所や個数により変動。
安全確認のポイント
親御さんの住まいにおける電気・ガス・火災の安全性を確認するための具体的なポイントを以下に示します。点検リストとして活用いただけます。
- キッチン:
- ガスコンロに立ち消え安全装置や消し忘れ消火機能は付いているか。
- 換気扇は正常に作動するか。
- ガス警報器やCO警報器は設置されているか、有効期限は切れていないか。
- コンロや周辺に燃えやすいものは置かれていないか。
- リビング・居室:
- 暖房器具(ストーブ、電気ヒーターなど)の周囲に燃えやすいものは無いか。
- たこ足配線になっていないか。
- コード類が通路や足元に露出していないか。
- コンセントやプラグに埃は溜まっていないか。
- 寝室:
- 火災報知機は設置されているか、正常に作動するか(テストボタンを押してみる)。
- 電気毛布やあんかを使用している場合、高温になりすぎないか、消し忘れ防止機能はあるか。
- 仏間:
- ろうそくや線香は電気式か、または火を使用する場合の対策(防火マット、消火器など)はされているか。
- 全体:
- ブレーカー盤に漏電ブレーカーや感震ブレーカーは設置されているか。
- 古い電化製品やガス機器を長期間使用していないか(定期的な点検・交換を促す)。
- 簡易消火具(消火器など)の設置場所と使用期限は適切か。
地域のリソースと相談窓口
高齢者向けの住宅改修に関しては、お住まいの自治体が独自の助成制度を設けている場合があります。改修内容や所得制限など、要件は自治体によって異なりますが、電気・ガス・火災に関する安全対策も対象となる可能性があります。まずは自治体の高齢者福祉担当窓口や建築担当窓口に相談してみることをお勧めします。
また、地域の工務店やリフォーム業者の中には、高齢者住宅の改修に詳しい事業者も多くいます。今回の記事で挙げたような具体的なリスクや対策について相談し、専門家のアドバイスを受けることも有効です。介護保険制度における住宅改修の対象となる工事もありますが、電気・ガス・火災に関する改修の多くは介護保険外となるため、自治体の独自助成や自己資金での対応が中心となります。
まとめ
離れて暮らす親御さんの住まいにおける電気・ガス・火災に関する安全対策は、物理的なバリアフリー化と同様に、あるいはそれ以上に、緊急度と重要度が高い場合があります。日頃からの見守りやコミュニケーションを通じて、潜在的なリスクを把握し、この記事で紹介したような具体的な対策を講じることが、親御さんの安全な暮らしを守るために不可欠です。
ご紹介した情報や費用目安は一般的なものであり、実際の状況によって異なります。専門的な判断や工事が必要な場合は、必ず資格を持つ専門業者に相談し、適切な対策を実施してください。早期の確認と対策が、安心につながります。